表面には、ボイオティア地方の戦士が使用していた円盾が打ち出されています。テーベ軍の精鋭軍団である「神聖隊(*二人一組の男性同性愛者から成る歩兵部隊)」も用いていたと考えられています。
　紀元前371年にレウクトラの戦いでスパルタ軍に勝利したことで、テーベはアテネやスパルタに代わってギリシャの覇権を制しました。しかしテーベの覇権は一時的なものに過ぎず、やがて北から伸張したマケドニア王国に圧倒されました。紀元前338年のカイロネイアの戦いにおいてフィリッポス2世とアレクサンドロス王子(後のアレキサンダー大王)率いる軍に敗北し、神聖隊は全滅。後にマケドニア王国に対して反旗を翻しますが、アレキサンダー大王の怒りを買って壊滅させられ、テーベの都市は徹底的に破壊された後、生き残った住民は奴隷として売り払われました。

　裏面にはアンフォラ壺と棍棒が表現されています。棍棒はヘラクレスの象徴であり、ボイオティア地方で盛んだったヘラクレス信仰を反映しています。