• マクシミヌス・トラクス帝/ヴィクトリー女神&捕虜
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 3世紀、軍人皇帝時代の古代ローマ帝国で発行されたデナリウス銀貨。通常のものと異なり厚みが薄く、直径が大きく打ち出されています。勝利の女神ヴィクトリー(ウィクトリア)は直立して月桂冠を高く掲げる姿で表現されており、その足元には小さな捕虜が後ろ手を縛られ、女神を見上げる様子で座らされています。

 表面には面長のマクシミヌス帝(在位:AD235年~AD238年)の横顔肖像が打ち出されています。マクシミヌス帝はもともとトラキア出身の農民であり、兵士として出世した人物でした。その出自から、元老院や貴族、ローマ市民からは「マクシミヌス・トラクス(トラキアのマクシミヌス)」と渾名されました。
 マクシミヌスは怪力自慢の大男であり、身長は2m50cmもあったと伝えられています。武勇に優れ、兵士からは厚い支持を集めましたが、軍事行動の資金を集めるために市民の財産を強制的に徴収するなどの暴政を行いました。ついに元老院から「公敵」と宣言された後、ローマへ進軍する途上で暗殺され、その治世を終えています。
 『ローマ帝国衰亡史』を著したエドワード・ギボン(1737年~1794年)は、マクシミヌス帝を「文明人どころか、人間としての心情すら完全に欠如した野獣的暴君」と評しています。


 

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