• イスラーム帝国 ウマイヤ朝 8世紀 ディルハム銀貨
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 8世紀初頭のイスラーム帝国で発行されたディルハム銀貨は、ギリシャの「ドラクマ」に由来する単位として中近東で広く流通し、イスラーム帝国の勢力拡大と共に流通範囲を広げました。今尚、「ディルハム」はアラブ首長国連邦やモロッコなどの通貨単位として残されています。

 このコインは、ウマイヤ朝第8代カリフ ウマール2世(在位:717年~720年)の治世末に造られました。ウマイヤ朝はイスラーム教の最高指導者カリフの地位を代々継承した、ウマイヤ家による王朝です。首都はシリアのダマスカスに置かれ、西はモロッコ、イベリア半島から東はアフガニスタン、パキスタンにまで至る広大な地域を支配しました。
 首都ダマスカスは征服地内外から富が集まる一大交易センターとして繁栄しました。8世紀初頭の最盛期に建設されたウマイヤモスクは、世界最大級の壮麗なモスクとしてウマイヤ朝の権勢を今に伝えています。

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                       ウマイヤモスク
       画像は1890年にドイツ人画家グスタフ・バウエルンファイントによって描かれた作品


 ウマール2世は征服地の住民に課せられていたジズヤ(人頭税)を廃止し、唯一神アラーの下で万民が平等である理想のイスラーム帝国を考えていましたが、短い治世の間に実現することはできませんでした。
 しかしそれまでの武力によるイスラーム帝国の領土拡大策を改め、イスラームの教義を実践することで平和的に広める方針を採った名君として評価されています。ウマイヤ朝の歴代カリフの中でも特に公正で穏健な人物と見做されたウマール2世は、当時の人々からも尊敬を集めました。後にウマイヤ朝がアッバース朝によって滅ぼされた際、ウマイヤ朝のカリフの墓は尽く暴かれましたが、ウマール2世の墓にはアッバース朝も手を出さず、破壊と略奪を免れたと云われています。


 ウマイヤ朝の功績は帝国の共通通貨「ディルハム銀貨」「ディナール金貨」の発行を開始したことです。その様式は偶像崇拝を禁ずるイスラームの教えに基づいたものであり、表裏にはイスラーム教の聖典『コーラン(クルアーン)』の一節がクーフィー体のアラビア文字によって刻まれています。

 表面には、イスラーム教における信仰を告白する文言「アラーの他に神はなし」と刻まれ、裏面には「ムハンマドはアラーの使徒である」と記されています。


 

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