• エラガバルス帝/三美神
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  3世紀初頭、セウェルス朝期の古代ローマ帝国で発行された銅貨。このコインはパレスチナに存在したデカポリス(十大都市)の一つ、ガダラで発行されました。

 裏面には三美神の姿が表現されています。下部には発行都市ガダラを示す「ΓΑΔΑΙ」銘が配されています。
 三美神は古代ギリシャ・ローマの美を象徴化した女神像であり、それぞれ「美貌」「魅力」「創造」を示すと云われています。または「歓喜」「栄光」「恵み」、「愛」「貞節」「性愛」と捉えられるなど、時代や地域によって様々な解釈がなされています。

 この三美神像は古代~中世、ルネサンス、近代に至るまでの様々な西洋美術に表現された、古典的なテーマの一つでした。古代ローマ時代にはコインのデザインとして度々表現されてきましたが、主に東方の属州都市で発行された銅貨にみられます。しかし三美神を守護神として祀る都市はほぼ無かったため、継続的に発行された例は非常に稀といえるでしょう。

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                        三美神像
                     (ルーヴル美術館所蔵)



 表面には光の冠を戴くエラガバルス帝 (ヘリオガバルス帝 在位:AD218年~AD222年)の横顔肖像が打ち出されています。「エラガバルス」や「ヘリオガバルス」という名は、シリアの司祭長であった皇帝が信仰していた東方の太陽神に由来する渾名です。実際には偉大なる五賢帝にあやかって「マルクス・アウレリウス・アントニヌス・ピウス帝」と名乗っていました。


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 わずか14歳で即位した少年皇帝は、その恭しい帝号に反して艶聞が多く、派手と贅沢を愛した人物として記録されています。ローマの宮廷では豪華な宴会が頻繁に催され、妖しげな男女が出入りするようになりました。ある時には趣向として高級なバラの花を大量に宴会場にばら撒き、出席者を圧死させたという伝説まで生まれました。

 エラガバルス帝の短い治世下、ローマにはありとあらゆる性的趣向や悪癖がはびこり、風紀は大いに乱れたと云われています。またこの少年皇帝には女装趣味があるだけでなく、医師に相談して性転換の方法を検討させていたとも伝えられています。「卑しき身分の男性を自らの『夫』にしていた」「自ら娼婦としてローマ市内の娼館に通っていた」など、真偽も判然としない噂は多く記録されていますが、少なくともこの少年皇帝に対するローマ市民の評価が、当時から相当に低かったことは間違いないようです。

 このコインは東方のシリアでエラガバルスが皇帝宣言を行った年に造られました。皮肉にもエラガバルス帝はその後の短い治世の間に、三人の妻と結婚・離婚を繰り返しました。このコイン裏面に表現された三美神像と、深い因果を感じさせます。


 

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