• カエサル発行 ヴィーナス女神/戦勝トロフィーとガリア人捕虜
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 紀元前1世紀半ばのローマ内戦期、ユリウス・カエサルの軍団によって発行されたデナリウス銀貨。紀元前46年末から紀元前45年初頭にかけて、現在のスペインを行軍中に発行されました。主に兵士への給与や投降兵士への一時金、現地での物資調達を目的として造られたとみられています。しかし行軍中の緊急発行貨でありながら、そのデザインは細かく寓意と遊び心に溢れており、2000年以上を経た現在でも見飽きることのないコインです。まだ拡大鏡も無かった時代の彫刻師の強い意気込みと、高い技術力が見てとれます。

 表面には美と愛の女神ヴィーナス(ウェヌス)が表現されています。首飾りを身に着け、ティアラを戴く女神の肩からは、息子であるキューピッド(クピド―)が顔を覗かせています。

 裏面にはローマ軍の戦勝トロフィーが表現されています。発行された地域から考えて、カエサルのガリア遠征による勝利を讃えるトロフィーと推察されます。トロフィーの足下には、捕虜となったガリア人の男女が座らされています。左側の女性は顔に手をあてて嘆き悲しみ、右側の長髪の男性は裸に後手を縛られており、後ろを振り返ってトロフィーを見上げています。当時、多くのガリア人がカエサルの「戦利品」としてローマにもたらされました。女性や子供を含めた多くのガリア人捕囚が奴隷として売られ、ローマ社会の中に吸収されてゆきました。

 構図の下部には、発行者であるカエサルの名を示す「CAESAR」銘が刻まれています。


 

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