18世紀末のイギリスで発行された大型の2ペンス銅貨。その大きさと形状から、通称「車輪銭(cartwheel)」とも呼ばれる。この大型銅貨は英国王立造幣局(ロイヤルミント)で造られたものではなく、民間の造幣企業である「ソーホー造幣所」が製造を受託した。ソーホーは産業革命期を代表する金属加工業者 マシュー・ボールトンが、バーミンガムの北西にあった工場内に設立した民間造幣所である。ソーホー(Soho)の名称は既存の工場の南棟(South House)にあったことに由来する。当時としては最先端の蒸気機関駆動によるオートメーション設備を導入し、イギリス各地のトークン銅貨や海外植民地で使用されるコインの製造などを多数請け負った。


　肖像は英国王　ジョージ3世（在位：1760年～1820年）。堅実で真面目、素朴かつ自然を愛したことから、国民から「お百姓のジョージ」と呼ばれ親しまれた。その治世は60年に及んだが、その間にはアメリカ独立戦争やナポレオン戦争等、大英帝国にとって重要な局面が多くみられた。国王自身も晩年には精神錯乱や皇太子（後のジョージ4世）の醜聞等に悩まされた。